光秀が天下取れないわけ−「国盗り物語」の読後感

光秀は文武両道と言えるでしょう。歌道にも明るいし、鉄砲や戦にも強い。しかし、天下を取れなかった。彼は自分の才能を自負していた。道三も生前、光秀の才能を愛した。が、信長を殺した後に、あっさりと討ち取られた。やはり天下取るには、才能だけでは無理。光秀に覇気がなかった。彼の致命傷でしょう。その覇気のなさが、結果的に信長以下を鎮撫できなかった原因になった。その覇気は信長や秀吉にあった。たとえ、光秀が持っている教養がなくても、人々をひきつけたのは、やはり信長や秀吉であった。
道三「時代だ。時代というものよ。時代のみがわしの主人だ。時代がわしに命じている。その命ずるところに従ってわしは動く。時代とは何か。天と言いかえてもよい」
信秀「おれは天下をとるのだ。天下を取るには善い響きをもつ人気がいる。人気を得るにはずいぶん無駄が必要よ。無駄を平然としてやれる人間でなければ天下がとれるものか」
道三「いくさは利害でやるものぞ。されば勝つという見込みがなければいくさを起こしてはならぬ。その心掛けがなければ天下はとれぬ」

国盗り物語(一) (新潮文庫)

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